蔵王いこいの里

30代の再スタート

ちょうど3週間前、5月4日の事。
2年前の6月から1年10ヶ月少々在籍していた36歳の青年が卒寮し、在寮生による見送りと新居アパートへ引っ越す様子です。

連休中なので通常であれば何かと忙しい時期ですが、何しろ今年はこんな状況故に宿泊施設としては営業自粛状態。従って朝早くから何の気兼ねも無く見送りしました。

遠く南国の地からやって来たこの青年、都内の大学在籍中に挫折し、帰郷してからもほぼ引きこもり状態が続き、何だかんだと10年以上が経過してしまったそうです。
その間ご両親も色々と手を尽くし里の様な共同生活型の自立支援施設に相談へ行った事もあったようですが、なかなか本人を連れていく事が出来ずに時間ばかりが経過してしまいました。

彼が34歳の初夏、少々騙されるような形で親子3人で蔵王へやって来ました。
旅行のつもりが自立支援施設へ連れて来られたという・・・、まぁあまり推奨はしませんが現実にはよくある手段です。そうでもしないとその状況を打開する事が出来ないんですね~。真に我が子を大事に思う親であれば、時に心を鬼にし嘘を使ってでも覚悟を決めて行動するという良い例です。欲を言えばもっと早くこうした行動が出来れば尚良かったですが、彼のご両親もただ黙って指をくわえ時間を浪費していた訳でなく、色々もがき苦しんだ10年以上だった訳で、だからこそ騙してでも連れてくる事が出来るだけの親子の人間関係があった訳ですね。過去を悔いても全く意味はありません。大切なのは、同じ失敗を繰り返さない為に、今、この瞬間から何が出来るか・・・だけです。

10年以上の間、ご多分に漏れず家族以外との接点が殆んどなかったという典型的な引きこもり状態だっただけに、他者とのコミュニケーションがなかなかうまく取れない、言葉がスムーズに出てこない、相手の言葉の理解や状況把握が困難で時間がかかるなど、入寮当初は本人も相当苦労していたようですが、元々温和で攻撃性を全く持たない性格な事もあり、寮内での人間関係は大きな問題やトラブルは皆無でしたね~。

一人分にしてはスゴイ荷物の量・・・、モノ溜め込み過ぎたね。

入寮後約1年間は里の生活・作業プログラムをミッチリこなしながら、弱りきった体力をつけ直し、シャワーを浴びる事も難しかったアトピーも徐々に癒え(今ではすっかり全身キレイなお肌です(^.^))、他者との関わり方やコミュニケーション、間合いやリズムなどの感覚を徐々に取り戻しつつ、社会へ出る為の地力を少しずつ蓄えて行った彼でした。

昨年6月には、上山市内のドラッグストアのバイト面接を一発で通過し、結局今もそのバイトをしっかりと継続、素晴らしいですね~。
当初は仕事を覚えるのがナカナカ・・・とか、指示された内容をすぐに理解出来ない事が・・・的な弱音を吐く事もありましたが、徐々にそれらも克服できたようで、2度目の冬を迎える頃には仕事は極めて順調に推移していたようです。

温和で穏やかな性格ではあるのですが、同時に少々こだわりが強く、他人のアドバイス、助言を素直に聞き入れられないという困った一面も持ち合わせていた彼。頑固で意志が強いと言えば聞こえは良いのですが、決して自分にとってプラスにはなり得ない事でも、一度こうやると決めたらなかなか方向転換できない所があり、まぁ結局この辺が彼自身が自分の人生を生きづらく窮屈にしている一番の要因ではありました。
頑固でこだわりが強いのも悪い事ばかりではありませんけどね・・・、されど基本的には状況により臨機応変が大人の対応ですし、何より「過ぎたるは及ばざるが如し」、何事もバランスよくホドホドが良いのではないかと・・・。

そんな頭の固さも寮生同士の日々の触れ合いやスタッフからの指導により少しずつほぐれたものの、まだまだ色々と不安の絶えない状態ではありましたが、ご両親の「何事も自分で経験する事が大事」という考えの元、この時期に一人立ちとなった訳です。そうです、自分で経験する事が何よりも重要です。それが出来る、耐えられるだけのスキル、実力が身に付いたと判断できるのであれば、そうするのがベストな手段です。

人間的に好かれるタイプなので、在寮生に引越しのお手伝いを頼んだ所、2つ返事でOKしてくれた者が2人。こういう所で性格の良さが功を奏しますね~(^.^)

とこんな感じで34歳で入寮、2年弱の在籍により36歳となった南国の青年は、仕事を継続した状態のままいこいの里を無事卒寮し、山形市内のアパートへ転居、名実ともに「自立」する事が出来ました。

先週末も別な卒寮生が2名里へ遊び(という名の栄養補給)に来ていましたが、S君も困った事があれば、遠く離れた地元の親へ電話するのではなく、いつでも里へ連絡を寄こすように! 何でも親に連絡!はそろそろ卒業しましょうよ。

昨年は45歳の青年が似たような良い形で卒寮していきましたが、こうして30代後半、或いは40代であったとしても、本人とその家族に揺るぎない覚悟と必死な思いがあるならば、たくさんの人の助けを得ながら社会へ独り立ちする事は決して難しい話ではないのです。

まして20代、10代後半なんて、まだまだどうにでもなる年代です。
多少不器用であったり要領や間の悪い若者であっても、決して現実から目を背けず、自分の弱さ至らなさを真摯に受け止める謙虚さと、他人の助言を聞き入れる素直さ、そしてそれを可能にするための親子双方の将来を見据えた覚悟があれば何とでもなります。

充実した人生を送る人は漏れなく熱い情熱を抱いているのと同様、状況を大きく変える為には親子共に、特にこの青年の様に親に大きな決意と覚悟と現実的な行動が絶対に必要なのです。

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