一人の人間が集団や社会の中で生きる為に必要な『生きる力』を身に付ける為に、蔵王いこいの里では以下の活動に取り組んでいます。
※但し、各自それぞれ違った事情や個性をもってやって来ますので、実際の現場では十人十色、10人の寮生がいればスタッフは10通りの対応をもって、キメ細かに接しています。
(1)基本的生活習慣と人間としての「あたりまえ」の日常生活を取り戻す
共同生活の中で日常の生活習慣を整える事。具体的には自己管理(身の回りの整理整頓、掃除、洗濯、入浴、時間・ルール厳守等)の習慣付けに始まり、共同作業活動(農作業、土木・木工作業、山菜採り、スキー実習等)や当番(動植物の世話、食事・掃除当番、接客訓練等)の実践を通し、規則正しい生活サイクルの習得と維持を最優先事項とします。その上で、日常作業のみでなくランニングや球技、スキーなどのスポーツを通じ、仕事や学習が継続できるだけの体力増強に並行して取り組みます。体力増強は、必然的に我慢・忍耐等の精神的能力の向上に繋がります。
日中作業に限らず、一日24時間、食事や仲間との何気ない毎日の生活の場面で訪れるスタッフからのアドバイスや指導、他者との摩擦やトラブルを日々乗り越える事で、偏った性格や年齢不相応に幼稚な自己中心的思考を自覚し、身勝手や都合の良い自己主張を抑えられるよう訓練されます。その事で、徐々に円満な人間関係を築く上で欠かせない協調性や忍耐力、相手の立場に立った思考力(思いやり)が培われ、円滑なコミュニケーション能力に結びつきます。
併せて家族(親子)関係の修復(見つめなおし)により、甘え、依存、過去への固執と現実逃避を認識し、真の意味での自分の為、自己の将来を見据えた思考と行動に繋がる変化を促します。
個別の面談や相談は気取らずお互いに本音で・・・。
工具修復や使い方のレクチャー
集団アルバイト ※さくらんぼやリンゴ、ラ・フランス等果樹園での摘花、摘果、収穫等のお手伝い
集団アルバイト ※イベント会場の設営&撤去等のアルバイト
集団アルバイト ※スキー大会における旗門審判員等のアルバイト
(4)当施設と連携した山形市内精神科への通院も可能です
精神科、思春期外来の病院にご協力いただき連携しておりますので、状況に応じ必要な方は定期的通院、受診が可能です。この病院は、闇雲に不要な薬の大量処方は絶対にせず、また服薬者も可能な限り減薬し、いずれは薬のない生活を目指す方向性で診察してくれます。これは必要最低限の服薬、出来れば薬に依存しない生活を取り戻す事が望ましいと考える当方の理念とも一致しており、当方も全幅の信頼を置いて受診頂ける安心できる病院です。
※不登校や引きこもりの期間が長くなるほど、ここまでの部分への支援、対応に多くの時間が必要となります。
(5)通学・進学等、基礎教養的能力習得の機会を疎かにしない
希望者は状況を判断しながら、地元の小学校、中学校、県立高校(全日・定時・通信)や私立高校へも通学可能です。これまでも不登校、引きこもりであったたくさんの生徒が、市内の小中学校や高校を卒業し、その後の進学や就職などの道へ進んでいます。
なお、義務教育課程にある小中学生は、不登校であっても当施設に在籍し、所定のカリキュラムを消化した場合には、施設開設当初よりのほぼ全てのケースで『登校』扱いとされ卒業証書も受け取れています。
また、高校卒業後の入寮者、或いは在籍中に高卒認定を取得した寮生は、大学等への進学実績も多数あり、本人に真のやる気と行動があれば学習中心の体制もサポートしています。
(6)仕事も学業も「体が資本」、知識や理屈だけでは世の中は通用しない
日々の活動を通して精神と身体の鍛錬を進めると共に、できる限り安易に向精神薬や風邪薬などの西洋薬に頼らず、人間本来の治癒力、自浄能力が働く本当の人間らしい生活を取り戻せるように、定期的に鍼灸師の先生にも来ていただいています。不登校、引きこもり、ニート等の状態が長期に亘っていた若者は、根本的な体力も含めて体の様々な部分に解決すべき課題を抱えているケースがほとんどです。これも重要な自立支援の一環で、健全な精神と健全な身体は切り離せないものであり、この両方が取り戻せてこそ初めて本当の自立が成り立つものです。
(7)資格が全てではないが、自信に繋がる一つの手段でもある
日常生活と作業を通し、寮生の中で模範的且つリーダ的な立場に成長出来れば、希望者には各種資格(運転免許、危険物、建設機械、調理師、スキー指導員、その他応相談可)の取得をサポートします。
(8)ある程度の「実力」が身に付けば、仕上げは実社会での現場経験の積み重ね
上記の共同生活や作業が順調にこなせるようになり、ルールを守り社会的常識を理解し周囲とのトラブルもなく、コミュニケーション能力や自己責任能力が身についてくれば、引きこもりやニートの状態からは概ね脱出できています。その後は接客訓練やボランティア活動、地元各企業の協力を頂きながらのアルバイト経験を経て、次第に本格的な自立や就労へと移行します。